『うつくしい墓La belle tombe』原田マハ

どこまでが史実か創作か分からないが、ひねりのない回想物語で、こういうものが『すばる』に載る理由がよく分からない。恵まれない主人公に実はすごい審美眼があったなんて、よくあるシンデレラストーリであって、たとえ創作でなく事実としても面白いとは思えない。また技術的には、明らかに目の前に人がいる語り口が、なぜか途中から書き言葉的な回想になっている。これも良く分からない。
ただ美術作品に対する表現は喚起力があり、最後まですんなり読むことは出来た。ピカソマティスの絵を実際にも見てみたいとまでは思わなかったが、それはもともと美術というものにたいする私自身の興味が足らないせいかもしれない。