『ナイトウ代理』墨谷渉

相変わらずS女性とM男性もの。しかも男性は、たいてい平凡でどちらかというと貧弱な人間。すばる文学賞以来、まったくこの人のモチーフは変わらない。全部読んだかどうか分からないけれども。
しかし今まで読んだ墨谷作品のなかで私にはこれが一番面白かった。完全なリアリズムではないものの、一歩間違えばこういう世界はそこにある、といったような日常への接続を感じるからだ。内藤代理の行為がじつはあまり意味がないのかもしれないのに、女性の側が積極的にM願望として捉えてしまう所などは面白い。それに、今回は短くまとまっていたしね。
むろんいくらか面白さが分かってきたからといって、積極的に読んだり薦めたりはしないんだけれども。