『群像』 2009.4 読切作品

また辻仁成のこないだの小説つながりですが、プロレスについてです。
昔はプロレスというものをいわゆるゴールデンタイムにテレビ放送していたんですね。今思うとちょっと不思議なのですが、明らかにショーであって真剣勝負でも何でもないものを、一所懸命家族みんな見ていたわけです。
いつの間にかテレビのプロレス放送は廃れてしまいましたが、私にとってはずっと昔から廃れていて、それはUWFのビデオを見たときからです。初めて見たときはショックでした。キックとかの打ち込みがとにかく半端でない。佐山聡とか山崎とか前田とか蹴りの得意な人達が、藤原、木戸に対してその一撃でKOするぞというくらいの強さでガンガン打ち込んでいて、そういうのを見てしまうと、従来のプロレスで見られるような技が如何に本気でないかが分かってしまうのです。"ストンピング"とか言っても蹴ってませんでしたからね、つついてるようなもので。そんな従来的なプロレスなど全く見れなくなってしまうのです。
おそらく今の人のように最初から「プライド」で格闘技に入る人には、このようなショックは無いと思います。
そして当時の(正確に言うと第一期)UWFは、その所属選手の寄せ集め感と、テレビ放送のような派手な実況のないせいか淡々としてしかし密度の濃い試合内容が、場末といってよいような雰囲気、ボクシングで言えば世界戦ではなく後楽園ホールでの日本人同士のノンタイトル戦のような雰囲気を漂わせ、なんとも言えず、よく借りたものでした。そのビデオをよく借りたのも駅のガード下の並びにあったアダルトメインの、場末のようなレンタル屋でしたが。
何度か引っ越して遠くなったので知りませんが、あそこも恐らくもう無くなっているでしょう。そういえば、いつのまにかゲオとか蔦屋だけで独立系のレンタル屋そのものを殆ど見かけない気がします。コンビニの数とまでは行かないものの、感覚的にはその半分くらいは、街道沿い、駅前などあちこちにあったような気がするのですが。
レンタルビデオ屋の屋台骨を支えていたアダルトも今やネット配信なのでしょうか?その方面は、この数年遠ざかるばかりで不案内でよく分かりません。別にカマトトではなくて。