『テント集落奇譚』又吉栄喜

ほんとに隣町まで噂が伝わるほどに容姿端麗な人はこういう内面を持つのだろうか、と思ってしまうくらい、その内面の記述が平板でスカスカな印象。「私はほんとうに綺麗。装飾品もなぜか好き」というだけみたいな。そうなると話の内容までもが、平板に見えてくるのだろうかはわからないが、奇譚というわりには、恐ろしさや気味の悪さも感じさせないものになってしまっている。門番老人や集落の長などのキャラも深みがない。
戦争に関わることなど、幽霊を持ち出さなくても、もっと理屈に合わないような不条理なあれこれは沢山あったのではないか。と何ヶ月前かに読んだ大城立裕の小説を思い出しつつ思うのであった。