『日本人の戦争 ――作家の日記を読む』ドナルド・キーン

一気に読んでしまった。
戦争に夢中になってしまった作家(永井荷風を除いて)たちの日記を余り詳細な分析・論評をせず、事実と照らし合わせるかたちで淡々と抜粋する。
とにかく滑稽なくらい日本の勝利を信じているのだ。作家でこれだから、庶民においては言わずもがな、である。というか、作家がこれだからこそ、庶民もまた、なのかな。もしかしたら、日米戦争を遠くから客観的に見れた人は、文学からも遠かったのかもしれない、とか思ったりもする。
イギリスなどに友人もいたある作家などの言う事がすごい。「友情もろとも(英米を)叩き切る」ですよ。
ここまで戦争を信じていたのが滑稽に映るということから、やっぱあの時代は時代が違ったんだねという気分につながり、例えば中国人の捕虜殺害などを免罪したくなる人もいるのだろうけど、実際は、そういう事についてあの時代でも非を感じていた人がちゃんといるということは覚えていなくてはならない。
とにかく読みどころ沢山で、ヒトラーさえも当時は文壇で大人気。アウシュビッツ知らなかったのだろうからといえばそれまでだが、やはり驚く。
一億総懺悔とかいうし、耐え難きを耐えてきたじゃないかという人もいるけど、だいたい私みたいに高校まで普通教育を(きちんととはいい難い面もあるけど)受けてきた人が驚いてしまうくらいこういう戦時の事が知られてないんだから、この国は振り返ることにおいてやはり何か足りてないよな。
野坂昭如原作のアニメ映画とか、空襲のあるいは原爆の悲惨さばかりは伝えられてはいて、確かにそれは大事だけども、いっぽうで中国人や米国人を何百人殺したと聞けば狂気して喜んでいたという事も知られなければ。