『実習生豊子』青山七恵

じつにシンプルかつオーソドックスなリアリズム小説。むつかしい言葉使いや凝った比喩など使わず、しかも、これまでの青山作品に出てきたようなエキセントリックなキャラも不在である。
ここまでやると、これはこれでひとつの極だな、と思う。だって内容自体も、少女漫画なんかによくある、一見ちゃらんぽらんに見える人が実は自分よりもしっかりしていて思わぬ所で助けてくれました、人間ってなんかいいな、みたいな話だし。
田舎の図書館で司書をしようなどという、まちがいなく資本制社会によって形成されたにすぎない隠された己の欲望を、寸分も疑わないような人間が主人公ってだけで、うわ、とか思って私の場合は気持ちよく読めないのだけど、出てくる人々はどれも丁寧に描かれていて破綻がない。流石という感じだ。