『二倍』町田康

この世界はどこかニセモノなんじゃないかという町田らしいモチーフなのだが。たんに面白くない事もふくめてあまり感心しなかった。
たしかにこういうベンチャーキャピタル的なビジネスというのは、資本主義がいきついた果ての果てであって、「ニセモノ」の最たるものなのだろうが、こういう描き方で果たして「届いてる」のかどうか。オーウェルが描いた共産主義社会のパロディを思い出した。あれもやはり外側の目という感じがしたものだ。西側の人たちはああいうのを読んで喜んだようだけど、内側からは出てくるものはああいうものになるだろうか。
たしかに都心のオフィスタワーなんかに勤務している人のなかには、こんなのはニセモノだと感じてる人もいるだろう。が、しかしそれを年がら年中ニセモノと感じていてはああいう所に通えはしまい。ジーパン社長も我々のなかに容易にパロディとして(ひとつの別の自己として)取り込まれるようなものとは別に、圧倒的な他者の目をし、いたって真剣に自己実現していると感じてあそこにいるに違いないのだ。