『川』松浦寿輝

主人公の名前が平岡というから何かと思ったら三島由紀夫があの事件で死なずに生き残っていたら、みたいな小説。たまたま三島の本名を私が知っていたので分かったけど、ある程度文学を知ってる人以外にはこの小説なんの面白みがあるのか分からないだろうなあ。私も三島の事は世間に騒がれるような派手な出来事以外はほとんど知らないので、その内面の描写も、ああいかにも三島って近代の人だから、こういう伝統的なホテルの雰囲気とか好きそうだよなという部分以外は、ほとんどピンと来ないし、とくに面白くもない。OSからON砲を連想する所などは外してるかも。三島ってそんな鈍い感じではないと思うんだけど違ったのかな?必ずしもT君に対してではなくてももっとエロス的な何かでもあれば楽しめたのに。
ウィスキーをめぐって出てくる老婦人も存在感あるし、スコットランドの景色の描写も優れていると感じるが、まるでよくできた「製品」のような短編小説という感慨をいだいた。