『バイリンガリズム、エクリチュール、自己翻訳――その困難と喜び』ナンシー・ヒューストン

これはやたら感銘を受けた。とくに、文学、というか小説を書くことの目的−世界を大きくする−を明確に力強く述べたところ、そしてそれゆえに文学の多様性の擁護するところに。
また、著者が英語で作品を書いて、それを自分でフランス語に翻訳する作業を強いられ、がゆえに、もとの英語作品までもが検証されていくあたりの説得力もある。翻訳不可能性(その言語で書かれたものはその言語を母国語とするものにしか分からない部分がある)というのは確かにあるだろう。しかし、翻訳にもまた大きな意義があるのだ、という。それは母国語に栄養を与えるのだ。