『学問』山田詠美

いまや売れるかどうかは別にして、女性純文学者の番頭然とした印象のある山田詠美であるが、文芸誌中心に作品を読んでいる私のようなものにとっては、対談でよく目にするものの作品は殆ど読んだ事がなかったりする。大昔読んだ記憶から、ほとんど期待していない。
とりあえず分かるのは、ある女性についてその一生に近いくらいの部分を描こうとしていて、今回はその第一回ということ。幼児期〜少女期が描かれている。
この時期の人間だけあって、心理や自他意識などあってないかのごとき浅さだから、少し娯楽小説じみてしまう部分があり、また主人公の周りのキャラを分かりやすく極端化しているきらいがあってそこが余計にそう感じさせてしまうが、しかし、このような幼い時期だからこそ抑えられずに出てしまう子供ならではのイジワル=人間の原罪的な悪意など、リアルで、自分の子供の頃など想うにああそういう感じだったよなあ、と思わせる。自慰行為や親の性行為が赤裸々に描かれる所があるのは純文学ならではの部分だろうが、それにともなうショックはあまりじめじめとしたものとして描いていない。これもまた純文学っぽさを感じさせなくさせている。
今の段階ではまだどうこう言えない。読みやすくまあ左程飽きさせることはないという事は言える。