『太陽を曳く馬』高村 薫

高村が阪神大震災に未だに拘っているのは、そういう情報に疎い私でも最近知るところとなっているのだが、あの年に起ったもうひとつの重大事件にもおそらく高村はまだ関心を抱き続けているのだろう。
その事が非常によくわかる連載である。
前回のサンガのいきなりの解散にも驚いたが、今回のオウム解釈をめぐるやりとりの濃密さといったら!
現実にありえないこの会話の長さと迫力。鹿島田真希の連載とともに、さいきんこういう小説的現実(とでもいったらいいのかな的モノ)にやられてしまっている。
前回の弁護士にしろ、今回の僧侶にしろ、事務局長にしろ、中高年男性のキャラが皆かぶってしまっているように思えるのだが、だからといって全く否定する気にならない。あまりにも高村のオリジナリティが濃厚に出ていて、面白すぎるからである。