『川でうたう子ども』鹿島田真希

知恵遅れの女性が産み落としてしまった娘の話を中心に、寓話的な設定のもと、性や暴力の倫理を問う内容。読み疲れる。全体的にもちろん現実への批評なわけだから、どうしても現実に置き換えて読みたくなるし、といって現実に置き換えればこれはあの事だな、とすぐ分かるように書くのではあまり意味もないわけで、いろいろ考えながら読まざるをえない。
という訳で疲れるのと、アフォリズムの機関銃とも言うべき文章にもまた疲れを感じる。途中で息を抜くようなところがあまり無いのだ。これは鹿島田作品について以前も書いた覚えがあるが。
それでもやはり面白い。下流と上流との対比や、殺される昆虫の比喩などがとくに面白く感じ、だんだん宗教めいていくところも自然と盛り上がるが、総じて、われわれが普段生活しているなかで、いや生活だけでなく感じ考え生きているなかで意識しない部分、まるで当たり前に普通に基幹的になっていることが、たんに相対的でしかないものとして炙り出され揺さぶられていく。
ちなみにそれは、例えば引きこもりなどよりも更に外側からなされる(引きこもりというのはどうしてもポジに対するネガとしての側面が強い)。つまりは「現在」を疑わせるという意味では、上記の青来作品のような直接的な記述のものより、私の場合ずっと届くものがある。連続して読んだぶん、それが余計に際立った。