『天使の輪』朝比奈あすか

はじめて妊娠した女性が、昔学生だった頃にいじめて辞職させたそのとき妊娠していた女教師のその後に執心してしまう話。中学生の悪口ごときで辞めてしまうようなウブな教師などいるかとか思ったりするが、今の教師なんていろんな人がいるみたいで、無い話でもないだろう。ただ、昔のそんな事をずっと覚えているような内省的なタイプの人間が、いくら善悪の区別が付かぬ年頃とはいえ、そもそもそんな悪意を発露するだろうかという所は、正直どうなんだろうと思ってしまう。実感として掴みづらい。昔の私−今の私のその間がうまく繋がらなくて、その間にどういう事があったか、それとも無かったのか、その部分も書ければもっといいのに、と思う。ただ、樋口直哉の小説とは違い、印象に残る小説ではあって、その分この先を読んでみたくなってしまった。共感させ、小説に入り込ませる力は持っているということだ。