『美女の林間の空地』岡崎祥久

凡人である男性主人公が、世間とのかかわりを内省しつつ女性と宝くじの番号などをアイテムの軸に、パラレルワールドを転移していくはなし。
転移していくにしたがって、同居女性の行う家事(作ってくれる食事)の内容が劣化していくくだりなどは、予想はしたがなかなか面白かった。火星のタイムスリップってこんな感じではなかったっけ?
劣化していくにつれ、女性の現実感が増していくのも面白かったが、こういう話の構造を使ってたんなる虚無感を表現する以外に何をしたかったのか、があまり伝わって来ない。それでも生きていくのだ、的な部分も希薄だし。
主人公をパラレルワールドに導いた女神の存在をなんであんなに薄っぺらにしたのか、もイマイチよく分からない。その女神の存在の余計さが、焦点をぼけさせて、他の部分の奥深さへの意識をを必要以上に欠いてしまった気がする。