『悪い双子』前田司郎

以前だったらこの小説に、オモロない、と迷いなく断じていただろうが、後々述べる理由によりこの評価。よくよく省みるなら所々面白い表現はあるし、自分は失われた双子であるという発想もなかなかの着想といえる。ステンレスの棒云々のオチではなるほどと思わせたりもした。
一方で、幼い目で見た性の描き方があまりに普通にブンガクしているなあという感じでこの人らしくないし、いくら人の記憶が頼りないものだとはいえ(このテーゼは繰り返し語られるのだが)、ここまでブンガク的なあり得ないオチだと少ししらけてしまう。