『文字の消息』澤西祐典

しかしよくここまで二番煎じめいたもの出してきたなあ、という印象。デビュー作も今作も、まったく非現実的な現象を小説的リアリズムのなかに無理なく回収していてクオリティは高く、それぞれがもし単独で出されれば素直に評価するのだが・・・・・・。いやそりゃ例えば、西村賢太の小説だってワンパターンではあるのだけれど、そこには強烈なオリジナリティ、ユーモアがあるから付き合う気になる。しかしこれでは、なんかお勉強させられているかのような、たとえば社会科の教科書を出版社変えてまた読まされているような気もしてくるのだ。毎度毎度しっかり描かれている分ね。どこか、スマートで物分かりが良すぎで、良く思えるものが悪い印象に転化しかねない。そのうち、読んでいて既知のものについて教えを垂れられているような気がしてこないうちに、もっと過剰で破たんの気配のあるものを、と思う。