『あさぎり』上村渉

中盤は、気の置けない仲間に囲まれて弁当屋やって、中学生も更生できそうになって、みたいな心温まる雰囲気になりつつも、単純なハッピーエンドにはしていない。ものすごく強引だが、それはこの地の場がそうさせている、登場人物たちを虚無に追い込んでいるのではないか。そのくらい、駿河地方の、日本の基幹産業が集中していて街道沿いなんかみれば他の地方都市よりは十分豊かに見えつつも、都会とは決して言えない「すさみ」をはらんだ、場の雰囲気を小説内に流し込むのに成功しているように思う。この作家に対する評価は私的な好みが大きく作用していることは認めます。書き続けてほしい。