『電気作家(後編)』荻野アンナ

主な事は前篇のときに書いた。この作品読むまでは、容姿端麗だけども自分にはあまり関係のない作家と思っていたが、改めるきっかけとなった。というか、それだけでなく、大江健三郎筆頭に、村上春樹みたいなどうでもよいものも含めて、「良心的な」文芸界隈では、原発について書くのは反原発からしかありえない雰囲気になってしまっているが、それに抗してこういうものを書いたというだけで、貴重な記録と思う。たとえば、みんな従軍作家までやっているときに、まだ続けるのこれと言ってしまえるかどうか。でもこの作品、すばるに載っている広告みても単行本になってないんだよなあ。必読なのに。このへんは作者の意向が分からないから何ともだけど、文芸界隈が、これが単行本になりようのない雰囲気だとしたら、ほんとうに考えもの。
ちなみにこの作品、電力事情の話だけでなく避難所の運営をめぐっても色々書かれている。仕切りだのメンツだの出てきてとうぜん、NHKあたりで流される美談ばかりではない。机上であれこれ論ずるのや、あるいは一日か二日編集者帯同で被災地見て回って体験したかのように書くものからは、こういうものは出てこない。