『ニイタカヤマノボレ』絲山秋子

なんか恐ろしい雰囲気のある小説。
共同体の規範的なものを迫る男性と別れる事になる女性が主人公。で、彼女はアスペルガーで、鉄塔のたたずまいのあいまいさの無い事実性を好む。
私などはつい、なんとなく反原発な世間への批判としてこの小説を受け取ってしまう。あるいは、低線量被ばくなど蓋然性でしか現段階では事実性を言うことができない科学を信頼できない人々への批判として。
ただし、ぎゃくにその被害のあいまい性の拒否と、この小説を応援のように受け取る人もいるだろう。なにしろ世の中には、原発を、それは本来必要ない、経済的合理性もないものなのに、軍事的な要請、帝国主義的支配の合理性の要請から導入されたんだみたいな陰謀論を、得意げに、それを圧倒的事実として述べるような元有名ミュージシャンもいるくらいだからね・・・・・・。