『フラワーズ』松本薫

この作品はエンタ的要素はないので、「すばる」でいいとは思うがそれにしても・・・・・・。図書館から借りた身であまり文句もいえないので、あまりグダグダ書かないが、視点があまりにも少女側に偏りすぎていて、かつこの少女が善人過ぎやしないか。そしてこの主人公少女の母親がありえないくらいヒドすぎやしないか。これでは読者はどちらにもなることが出来ない。それに、少女=若い者=純真VS大人=汚れた存在という構図も、あまりに今更すぎやしないか。このへんは、たとえば、横田創あたりの描く少女とくらべてみるとより分かるのだが、この作品のヒネリのなさは「すばる」掲載にふさわしいとは思えない。
だから、この少女が下手したら母親を殺してしまうかもしれないような行為をするところがこの小説のひとつのハイライトなのだが、文章や描写は問題ないレベルなのに、恐ろしいシーンである筈のそのシーンが少しも恐ろしくない。少女が善人であることが読者には分かっているからだ。
どうせ読むならこの少女が実際に母親を病院送りにしてしまう話が読みたい、などといっても難しいとは思うが、母親の視点からの作品ならばまったく不可能ではないのではないか。(かといって、育児放棄や虐待に迫った作品はもうあって、しかも圧倒的に素晴らしかったりするんだけど。)