『星になる』山下澄人

勝手に悩んでればー?っていうくらい独我的で退屈な内省がくりひろげられる。自分と会話するだけでなくたとえばタクシー運転手と会話してもそこから何も派生しない。独我であって、運転手は手段でありモノでしかないから。空想の父親や母親のまえに目のまえの運転手を大事にしないような人が、イエスを語ったところで面白いものになる筈もない。(有名だが、イエスは、家族を仲たがいさせるために私はきた、とかいう人だ。)
ところでラストにかけて、例えばもう「細菌の先祖がきいたら何というか」のところなんかではその発想のあまりの面白くなさに、文句いう言葉すら失いつつ、意外にも、飛行機が事故を起こして主人公がいろいろなモノになるところでの描写になかなか迫力があったのだった。