『予言残像』牧田真有子

これは正直がっかり。出来そのものではなく、私がある程度期待していた部分がこう書かせる訳で許して欲しいのだが。
なんと表現すれば良いのか迷うが、最早この手の類型があってそれに当てはなるような小説なのではないか、とまず思う。やたらと「深刻さ」に満ちていて、思わせぶりの台詞ばかりが飛び交う世界。いかにも純文学っぽいのだが、「ぽさ」をシミュレートしたかのようで、再度書くが、こういう類の小説にたまに遭遇する。そして辟易する。
この小説がリアルから遠いのは、きっと予言という超常現象を描いているからではないのだろう。この世界そのものが遠いのだ。
また、女性達がうまく描き分けられていない。来歴で区別しているだけで。これは余り意図的なものではないのではないか。しかしそれを技術的なこととして措くとしても、これは問題だと思うのは、人がこのようなたいして切羽詰らない観念的な理由で自死することはまず無いのではないか、ということ。絶対にないとは言わない。しかし、現実にある自殺という現象から遠い地点にいるからこそ、こんなふうに書けたのではないか。あまり倫理的に作者を責めるような書き方はしたくはないのだが、死を軽く見積もっていないか、どうか。例えば我々が、というか私だけかもしれないが、若かりしころ、具体的な死から遠いからこそ、観念的に自分の死をもてあそび、そこに美を見出したりしていた、そんな事を思い出した。