『群像』 2010.1 読切作品ほか

こういう事で十把一絡げに考えてしまうのは良くないことだと分かっていながら、ついつい公道上において自転車ほど危険な思いをさせる嫌なものはない、と嫌いまくっている昨今の、とくに自転車ブームなどといわれてから尚更の私ですが、むかし実は、2年間くらいロードの自転車にばかり乗っていた時期があります。
ペダルもピンディングにしていまして、しかも最初に付いていたLOOKのペダル(用のシューズ)が自転車から降りるとツルツルで歩きづらいので、わざわざシマノに換えて走っていたという、ちょっとした凝り様。ちなみにピンディングというのは、靴とペダルを固定する方式で、ペダルに足を固定すると、なんと踏み込みだけでなく、引き上げでもペダルに力が加えられるのです。とくにダラダラ続く上り坂など、踏み疲れると引き上げ中心に切り替えることが出来るので、飛躍的に楽になります。
さて、これでどういう失敗が考えられると思いますか?


正解は立ちゴケです。信号などで止まったとき、足をペダルから捻って外すのに手間取ったり忘れたりすると、自転車にまたがったまま足が地面につけない状態になり、足をペダルに固定され立ち止まったまま横に倒れます。けっこうやってる本人は惨めです。走行中ではなくたいてい赤信号とかで、並行する車とかは止まっているので危険ではないのですが、その分惨めさも増すような。
私はこれを3回くらい経験していて、その中で一番惨めだったのが、いきなり横の路地から割り込み左折してきた自転車が余りにも危なかったので、頭に来て、機会があれば一言文句でもと追いかけていたときの事。
きっとかなり頭来ていたのでそのせいでしょう、相手が信号で止まったとき足を外すの忘れたのです。当の追いかけていた自転車のその後ろでひとりコテンと交差点で倒れる私。その人に冷ややかな眼で見られ、とても惨めでした。