『逆光』荻世いをら

読んで2週間も経っていないのに、殆ど内容を忘れている。短く言ってしまえばそういう小説なのだが、いま、ざっとページめくって、ああ、そうだった中々アイデアのある作品だったなあ、と思い出した。
逆にいうなら、これだけアイデアのある小説なのに、なぜ読んでいるときもそれほど面白く感じず、そして忘却されてしまったか。ひとつの仮定的として、出てくる人物がどれも魅力がない、というのもある。藤原という人物もなんとも中途半端。せっかく登場させてこれだけ?みたいな。夫の浮気相手?とされる高齢の女性が豹変するところなど、本来ドキっとする場面なのだが、なんか作られ感が先行している。
そしてこの妻の内省なのか、憑依した夫の内省なのか、ほんとの所はよく分からないが、死んで気が変になるくらい相手のことを考えていた筈なのに、なぜか家庭での過去の生活で思い起こされることが冷え冷えとした退屈なことばかりで、読んでいるこちらも退屈してしまう。誰もがみんなクールなのだ。完成度はある程度高いのかもしれないが共感度はとても低い。