『すばる』 2009.11 すばる文学賞ほか読切作品

先日、CDが売れないという話をここで書きましたが、加藤和彦さんが自殺してしまいました。
この自殺については加藤さん固有の問題が多くを占めているのでしょうが、業界の状況があまり芳しくないというのが全く関係ないとも私には思えません。むろん直接の関係などないでしょうし、以下勝手な解釈で加藤さんには申し訳ないですが、「コマーシャリズム」というと悪い意味の語られることが多いものの、良い意味でも、売れる売れないというのは、アーティストのモチベーションを左右する面があるのではないでしょうか。例えばバブル期のユーミンなどは、それがうまく働いた典型例でしょう。
そして加藤さんの遺書らしきものをニュースで読んでいて、ブライアン・ウィルソンビーチボーイズ)がかつて言ったことを思い出したりもしました。「もう曲が書けないんだ、どんなメロディーも、どっかでもう使われてしまっている」そんな事を言っていた覚えがあります。しかも彼がそれを言ったのは相当昔の話ですから、今、まだ誰もやっていないこと、を音楽で探す難しさは更に度合いを増していて、加藤さんのような斬新なことを好む人にとってはとてもとても生きにくいものだったのではないか、と想像します。
それにしても、かわいそうなのは今、感受性の豊かな若者として生を受けている人達です。30年前に生まれていたらスターになれたであろう音楽的才能があったとしても、今はたいていの事が行われてしまっていて、ハードルはかなり高くなっているだろうからです。


最新号の『すばる』はなかなか力作揃いと感じました。