『あの子の考えることは変』本谷有希子

思えば文芸誌、といっても読者の少ない純文学雑誌を買い始めたきっかけがこの人なのであったが、今は昔となってしまった。今となってはそこそこエキセントリックな人物を描いていながらこの作品は、余りに普通にみえ、つまりは純文学にはもっともっと変わった作品が多いのであった。
と、そういう私自身の変化を差し引いても、本谷の持ち味である小ネタ的なちょっとしたおかしさが『ぜつぼう』の頃に比べて若干減ってはいないだろうか。それともあの頃の私が読めば絶賛したのだろうか。
女性2人が姉妹ではなく他人となってはいるが、内向的な異性にモテない方がラストになって爆発するというのは、本谷がずっと描いてきた基本線にあるストーリー。それでもやはり感動してしまうのは、勝手に爆発してるだけの日田を、自分を彼女は切実に必要としていると主人公が勝手に感じるところ。誤解と理解の境界線というのがまさにコミュニケーションのリアルな場であり、人は自分を必要としている人を切実に必要とするものだ、という切実さに達している。こういう感情を凡庸と思う人もいるかもしれないけど、じっさい切実なものは切実なのです本当に。