『とにかく家に帰ります』津村記久子

残念ながら私にとって、題名とモチーフから津村だったらこんな作品だろうなあ、と予想する範囲内にぴたりと納まってしまった。
あれほど前から津村は面白い言ってたんだから、ピタリならいいじゃないか、と言われるかもしれないだろうが、不思議なもので、というかただのわがままなんだけど、ピタリだと足りなく思ってしまったりするものなんだよな。主人公も、絡む相手のそれまで接点の薄かった男性社員も、もうどこかで会っているという感じが濃厚にして、驚きみたいなものがほとんど無い。
またひとつ気になったのだが、循環バスが来れないほど渋滞したわりには、徒歩の登場人物がみなそのバスに乗り遅れあっさり諦めるのはどういうわけなのか?徒歩で30分の所を渋滞するのなら、車はほとんど止まってるわけで、ちょっと走ればバスはまた捕まるのではないか。とか、小学生の塾があるくらい大きい所ならタクシーだってそこそこ走っていそうなものだが、とか、歩道をせき止めるなら車道も当然臨時歩道を作れないくらい狭まってるわけで、ならばふもとのコンビニには帰れない車の運転手が大勢たむろするのじゃないか、とかそんな所ばかりが気になってしまった。それにサラリーマンがコートを着ないくらいの季節に透湿性のないレインコートを着て雨の中をてくてく歩けばある程度は蒸してくる筈で、暖かい飲み物で暖を取るほどは冷えないのではないか、とか。