『電気馬』津島佑子

ひとりの老中年らしき女性が、長年世話してきたとおぼしき障害をもつ男性を殺害してしまう。しかし、それはなかば自分の意思からでたものではないのだ何かに動かされ・・・・・ときにニュースなどで報じられる痛ましい出来事にたいする津島なりの文学的答えといったところだろうか。
これはこれで、その文章力のせいで説得力はあるのだが、現実に迫っているかというと、どうかと思う。しかし、迫らなくても良いのかもしれないとも思ったりする。文学とはひとつの解釈を提出するものであり、そこに説得力があればいいのだ、と。
こういう痛ましい出来事はなかなか文学で捉えられるものではないのは分かりきったことで、それでもそれをなんとか救い上げようとする津島の情熱には敬意を払いたい。読みながら私は、小沢健二の「天使たちのシーン」を思い出していた。年代がバレるが、あそこで歌われた「サークル」とこの「電気馬」、小沢の捕らえ方はやや宗教的全体性を帯びてるとはいえ、突き進み続けるところがとてもよく似てるのだ。津島の視点も、小沢の歌のようなある大きさを感じる。個別の人間の物語に寄り添うように(それこそ津島自身が電気馬として)、描くところはやはり文学なのだが。


今日はやる気削がれたのでここまで。