『いはねばこそあれ―男色の景色(二)』丹尾安典

前回はたしか明治期の文士たちの男色あれこれだったのだが、江戸期の文化の影響がまだ残っている時代の話で、とくに不自然でも何でもないので(江戸時代では男色は全くタブーではない)、あまり興味を持てなかったのだが、今回は三島由紀夫と絡めて『薔薇族』という雑誌の内部にまで話が及ぶ。
よく調べているなあ、という感じ。むかし、『薔薇族』や『アドン』『さぶ』などの存在を一通り知っていた、というか古本屋などで度々買っていた者として、非常に興味深い内容だった。とくに三島由紀夫が男性の体臭に拘って、すごい臭いを発散させていたくだりなど、なかなかスゴイ話である。伊藤文学はもちろん藤田竜、内藤ルネという名前も懐かしい。そういう関係の人だったのか、という。
※なぜ私が、男色系雑誌をむかし買っていたかについては説明が必要だろう。若かりし頃私は、女性に対して、自分が女性に興味を持てない人間だと思われることが、ある種快感だったのである。だから女性がレジをやっているような書店でしかその手のものは買わなかった。これは、男性に奥手な女性が男色に興味をもつのと似て、現実の男女関係から逃避しているだけで、ほんとうに自らの性について悩んでいる人からすれば、非常に恥ずかしい行為だったと思う。