『嫌な話』前田司郎

時間があったので読んでみただけ。まさしく"独り善がり"と言えるような人物の事が、これまた独り善がりな文章で記述される。一人称だからそれで整合性が取れているのだが、最初の1ページから何ともウザったくて何度も読むのを止めようと思ってしまう。しかもこれ一人称だからそうしたというより、前作もこんな感じの文章だったように記憶しているし、前田司郎の資質を反映した文章というだけの気もする。これじゃ嫌な話というより私にとっては嫌な小説である。
例えば冒頭で服を選ぶのが面倒みたいなことが、それだけで何行も費やされかかれているのだが、服を選ぶこと自体を面倒に感じるような人間が、なぜ自分は黒い服ばかり着ているのか考えるような面倒なことを服を選ぶに際してするわけが無いだろう。服に関して何も考えてないからこそ黒い服ばかりになってるんじゃないのか。などとツッコミたくなってしまうわけである。
具体的なストーリーについては、展開はドタバタ劇という感じだが、着想じたいは悪くなく、もっとうまく膨らませれば面白くなる要素がある。