『修道女志願』小川国夫

さきの大戦のころの話で、修道院に志願する女性をその弟の目から描いたもの。自分の資質を理解するのがあまり器用でない姉と、それを分からない周囲への少年の反発を描いている。
もともと奔放な資質をもった女性が、そのことを分からず、逆に、結婚の失敗を契機に修道院へ、というのがなかなか面白い。人間の人生がときに皮肉なふうに動いてしまうのを、よく描いていて、却ってそれが資質に背いて上手くいったりする場合もあるから世の中面白い。姉にふられた男の深みのなさもいい。
ただオモロないにせざるをえないのは、これらのありさまが、どうしようもなく自分から遠いという感じがするのだ。描写のそっけなさもあるのか分からないが、なにか壁のようなものを感じる。