『ピクニック』村松真理

それほど強烈なオモロない理由があるわけでもないのだが、とりあえず読後感はあまり良くない。
まず登場人物のうち、主人公は普通に描けているのだが、他のキャラ、とくに男性陣のほうのキャラが魅力に欠けるというか、現実感に乏しい。母親の現実感もイマイチだから、失われた悲しみが伝わって来ない。桜の匂いであるとか、風の伝わり具合とか、そういうものと絡めて悲しい感じを出そうとしているのかもしれないが、現実感が希薄なため、観念的に操作されたものに過ぎなく感じる。
母と離婚してもう会わないだろう父親とか、とつぜん現れたその父親の再婚相手の息子とか、男性人については、さらにキャラが希薄でマンガチックですらある。観念的な暴力父と観念的な美男子。
冒頭暫く読まないと誰がなくなったことが分からないことや(ずっと妹かなんかかと思った)、話ベタであるようなことを言っておきながら、初対面の異性に早々と自分からタメグチとなり書き言葉のようなスマートな受答えをするところなど、このへんも興を冷まさせた。
余談だが、比喩にひとくふう持たせようとするところや、あまり練らずに適当な話作りました感などテイストとして中山智幸と似てなくもない。キャラの薄さという意味では木村紅美なんかと通じる気味もあり、文學界カラーというか、文學界の読切担当の人の好みでも出ているのだろうか。