『沈黙交易』辻原登

バブルで崩壊する地方都市、和歌山の毒入りカレー事件、中国共産党チベット侵攻など、社会派的テーマにも目を配りながら、印象としてはあくまでそれらは、添え物に過ぎず、物語の核は、分量的にもそうだが、現代から忘れ去られてしまった小人族との出会い、みたいなもの。
まったく興味のないハナシを最後まで読ませるのだから、力量は相当なもので、面白いといえば面白いのだが・・・。
なんというか、音楽で言えば非常にうまい演奏を聴かされて、いやあいい演奏だったな、と思いつつ、じゃあ、その人が出しているCDを積極的に買うかというと、そこまでではない。
面白いんだけれども楽しくない、というのも正確な表現ではないが、何かが足りない。
辻原登はまえにも何かを読んだ事はあって、良い作家だなと思ったことは覚えているものの、題名はしっかり忘れている。
つまりはそういう事で、今回もその枠を出ない作品だった。