『クチナシ』馳平啓樹

前作や、前前作にあったような、登場人物のまわりの空気に自分もまた囲まれているような鮮烈な印象は受けなかったが、こういう「特異さ」を競わない、三流私立を一浪して就職したような中層のひとたち、夫婦のすれちがいをリアリズム小説としてきっちり作品にして、それが載るということは是非歓迎したいと思う。それにしてもね、ハゲというのは悩ましい現象ですよ。