『渦巻』橋本治

もはや確立されたといってもいいスタイルで描く橋本治のこの手の小説は、近過去歴史小説のようでもあり、高度成長期を頂点として完成された近代というもののひとつの貴重な証言記録だろう。なにしろこれからは食糧問題、エネルギー問題、経済成長がこれ以上望めないだってもう十分便利だもん問題からして、解決のためには縮小均衡が不可欠で、それは未曽有でなかなか想像もつかない事なのだから。で、近代というものが、いかに人を個人というものにしつつかれが主観的には自由であっても、はたから見れば間違いなくその時代のなかにしかありえない生き方をしているのが面白い。