『ヤマネコ・ドーム』津島佑子

途中で、あーあの日本統治時代の台湾に渡った夫婦の連載の人だという感じが蘇ってくる。文体に独特のテイストがあって、その辺は純文学的なのだが、微妙な問題を扱っていながら決して重苦しくならないところがある。そういう唯一無比なところからも作家として決して嫌いではないのだが、面白かったかというと・・・・・・。いろいろな問題を盛り込みすぎた?んだろうか。もちろん作品の意図として、これほど長いわけだし、そういう「いろいろ性」、混沌としたところもまた狙いなのかもしれないが。発達障害の問題やそれを抱えた家族の問題に絞っただけでも、作品として足りないという事はないと思う。じっさいの所いうと、私にとって一番の難点は、幼いころの記憶にいい大人が何人もよってたかっていつまでも縛られているという点で、そういうのを基底にした作品に出合うと、ほんとかよって思ってしまうのであった。