『私は風習のペット』シリン・ネザマフィ

基本コンセプトはOLに自分使うような言葉で自分語りをさせてみる、といったところ。一貫性はあって最後までよく書けているとは思う。ただ、結果としてこういう言葉を使ったせいで、ちょっと頭の足りないOLふうになってしまったけれど、口に出す言葉と裏腹に、OLっていうのは、いやOLだけに限らないんだが、もっと腹に何かを抱えているものだと思う。そういう意味で軽い読み物としてはオーケーなのかもしれないけど、純文学といっていいのかなあ、これ。裏切ることになりそうな先輩女性社員の顔も今ひとつ見えてこない。
社の慣習に縛られること、もテーマのひとつにしたいのかもしれないけど、従うにしろ反発するにしろもっとドライで、その場で判断する程度のもので、家に引きずってまでウダウダ考えるというのも分からない。少なくとも意識的には自分は従っていないつもりが、いつのまにか人を従わせていたのなら文学となりうる。