『新潮』 2010.7 読切作品

イキオイであれこれ書いてしまったので、受賞者無しの前回とは違って少し注目していた芥川賞ですが、BSニュースで知った瞬間あらら、と少し落胆したりして。赤染さんのなかでは、今まで読んだなかで一番ピンと来ない作品だったんですよね・・・・・・。
しかしこれまでにも中々面白い作品を書いているし、芥川賞としては世と隔絶した盛り上がらない感じがグッドなのかもしれません。


で、期待のわりには印象の薄かった受賞作をそんなもんだったっけとパラパラ見返していたのですが、やはり今もって、乙女達のドタバタ劇のそのドタバタのせいでアンネの言葉のインパクトまでが薄まってしまったのではないか、というのは変わりません。
「オランダ人」というのも、それどころか「ユダヤ人」というのも幻想に過ぎない、しかし悲しいかな、我々は名を無くしてしまっては(「○○人」でなければ)、存在しなくなってしまう、というのは、テーマとしてはこれは近代の呪縛の中心なわけで、ど真ん中。今もってアクチュアルなものです。だから意欲的な作品と言えるし、というかこれ以上意欲的なものもなく、これまでの赤染作品よりは一歩進んだように見られたのでしょうか。
私はああいう題材を軽く扱ってはいけない、というのとはちょっと違って、そのドタバタそのものについて「政治」をあまり感じなかったという事なのかもしれません。いや違うか。やはり戯画的なあるいは図式的な分かりやすさから外れた所にこそ見られる政治性を、と思ってしまう。のですかね。


あー『新潮』は読むとこ少なかったです。連載が良いんで買いますけど。とくに角田さんの作品がすごく面白くて、男性の女性の才能に対する嫉妬、という核心にいよいよという感じでしょうか。