『見知らぬ人へ、おめでとう』木村紅美

もう一度書いたことかもしれないけど、木村作品にでてくる主人公って、同調圧力にのらない群れない女性でありながら、きちんと自分の生きる楽しみを見出しているかのような女性が多く、作品全体に楽天的な空気も漂い、当然私などがシンパシーを抱くことは少ない。だから私のもともとフェアでない小説評価のうちでも、木村に対する評価はよりフェアではないものに違いない。
リアリズム小説としては良く出来ている。とくに結婚式の合間の時間つぶしのシーンで、グループ同士固まって行動しがち女性たちがグループ外の女性を遠慮なく誘うところがいい。いい意味でも悪い意味でも大人なのだ。
しかしこの小説にそういった良さ以上のものはない。いま少し「訳のわからないもの」があっても良いと思うのだが、あって南国志向みたいなものだけだからなあ。もともとあまり小説など読まないタイプの女性を扱っているだけに内省も浅いもの。
他に挙げるなら、最初に出てくる主人公が、話が進んでもうひとりの主人公と出会うとき、一人称視点と対象されたものとで全く印象が違っているのに少し戸惑った。つまりは、それぞれの主人公が一人称視点だと区別しがたく似てるのだ。それが対象化され外から見るとがらりと変わる。しかしこれは似たもの同士がテーマなのだから意図的なものか。
それにしてもボ・ガンボス、懐かしい。躍らせるバンドでありながらノリというかグルーブ感に欠けたバンドで、何だコリャとがっかりした事がある。さもありなん、しばらくしたら活動休止した。