『流れに運ばれまいとするもの』小野正嗣

短編だから仕方ないといえば仕方ないんだけど、ひとつのイメージだけで通した分やや広がりを欠いた気がしないでもない。これまでの小野作品を知っていればこそ、こういう作品もありだろうと思うし、地面に伏すモノ言わない老婆というのは、現代社会が省みないものの象徴として、それに居場所を与えようとするいつもの小野テイストで、支持できるのだが。今後は欲をいえば、もっと我々の側にもフレームを引き寄せた、詩的ではない、情景描写を欠いたとしても、悪く言えば俗っぽい作品が読んでみたいもの。でないとしぼんでしまいそう。