『文學界』 2009.7 読切作品ほか

芥川賞の候補者が決定していたことを先ほど知りましたが、意外に感じる人が多そうな顔ぶれですね。(誰がどうこう、というのは置いておきますが。)私としてはこの人が芥川賞ってのはなんか抵抗あるなあ、という人が候補者にいないので、意外とか残念というより安堵感の方が強いです。
それにしても藤野可織『いけにえ』なんて(私は好きだったしここでもそう書いた覚えがあるけど)、そんなに評価高かったっけと、芥川賞との関連性が強いとされる『文學界』の「新人小説評」を見てみると、やはりベスト5には挙がっていない。当時の『群像』で合評もされていません。
というか、「新人小説評」氏2氏のベストが殆ど無視されていて、半年も執筆させておきながら、しかも一方の人は大江賞なのに、そう来るとは。これは文春社に勇気があるということなんでしょうか。たんに評価が割れている難しい期なんだとすれば、この候補作のなかでは一番面白く読めた『いけにえ』の、あっと思わせる受賞もありえたりして。非リアリズムの程度も選考委員に受け入れられそうなレベルですし。もともと藤野さんも文學界新人賞ですから、べつに「あっ」ではないのかもそれませんが。


さきほど残念ではないと書きましたが、新人小説評を読みかえしていて気付いたのですが、村田沙耶香の名前が芥川賞候補にないのはやはり正直残念です。本谷作品の清掃工場煙突行きのようなエキセントリックな行為よりも、村田作品の平凡な近郊の温泉行きのほうが、読んでいて圧倒的にドキドキさせましたからね。その友情の、危ういバランスの上にある感じ、距離感覚もよく出ていたし。


毎度恒例、更新さぼってるうちに次の号が出てしまいました。