『海峡の南』連載完結−伊藤たかみ

最後まで父と会えず。なんだ結局は主人公とそのイトコのこれからみたいな話で終わる尻切れとんぼな感じ。この感じは、父の不在をテーマにしていながら、なぜそこまで父を想うのかが最後まであまり伝わってこなかった事にある。なんでそんなに父と再会したかったんだっけ?
最終回には「恐らく僕と父の欠点は欲しいものが何なのか分からないということだ」とかいう記述があるが、これなどもよく言うよ、としか思えない。イトコとHしたり株やったり、あるいは父は2号がいたり、こいつらはじゅうぶん欲しいもの手に入れてるじゃないか。「それがほんとに欲しいものなのかどうか分からない」ならば話は分かるが、そんな感慨はたいてい皆持ってるはず。
またこの主人公の、イトコを含めた「オンナ」を見る目が、ときどきなんだけど、どこか全く違う生物を見るような気持ち悪さがあって、これも馴染めなかった。
最後まで読めたのは、物語全体に北海道や関西の空気がどこか感じられる部分があったところ。ここは良かった。