『新潮』 2008.12 読切作品ほか

世の中には、いわゆるギャンブラーというか、物事がどちらに転ぶかに関して嗅覚が特異的に鋭い人々がいるように思います。
博才(バクサイ)があるというより少し広い意味で、勝負勘に優れた人たちが。
大手商社の研究所の人とかいわゆるアナリストとかが、理路整然と、今これこれこういう原因があり、それはこう影響し、世の中はこうなるだろうと言ったりするのがときに見事に外れるのに比べ、彼らは驚くほど言い当てる事があります。彼らの場合は、勘がそう語りかけるだけで、理論付けできたりはしないのですが。
で、こういう才能って生来のものかもしれませんが、いちかばちかの場で獲得していく部分もけっこうあるのではないか。だから、学者やアナリストのように進学高校・中学〜一流大学〜大学・大企業というリスクの少ない人生選択をしてきた、積み上げ型の人には真似できない。積み上げたものをいくどもすっからかんにしたり、されたりして勝負してきた人には敵わないのかもしれない。
などという事を、昨今の経済危機の進行を早い段階でほぼ言い当てた知り合いの言葉を聞きながら思いました。
でも面白いのですが、もちろん百発百中じゃないんですね。その知り合いも敬服してしまうくらい勝負勘の鋭い人なのですが、あまり恵まれた生活はしていない。人生の岐路上より肝腎と思えるような選択で、致命的に誤ったりするんです。余計な感情が入ってきたりするからなのでしょうか。