『terra』川上弘美

勝手に地球のことかと思っていたら、寺の事だったのか?しかしだったら”tera”になるはずでよく分からない。まいずれにせよ、この人への私の評価は不変。あんまり面白くない。
基本的に先ず思うのは、この作家切実に書きたいことが無いんだろうなあ、ということ。ガッツというかハートというか、そういうものが感じられないのだ。魂の込めてない美しい彫刻みたいなもので、恐らく技術的には言うことは余りないのだろうけど、それ以外にこの小説を読んで言いたいこともない。手首を縛ってどうのこうのって何?と思っていたらSMらしくて、こういう切実性の希薄なエロを挿入するのもあざとい感じしかしない。あざといといえば、シックスセンスじゃないんだから、最後になって、いかにも現実の女性のように描いたんですが妄想でしたみたいなのを明かすやり方も、なんか読まされたなあ無理やり突き合わされたなあという気分が支配して、後味が悪い。途中まであれだけ現実のように描きながらコレはないよねえ、という。(ただし、そこへ落とす技術はやはり鮮やかではあるんだよなあ)
死んだ女性が抱いている性的なものに対する思いも、とくべつテーマになるほど面白いものでもないし、それが面白い表現のされ方をしている訳でもない。
かといって、このちゃらんぽらんとした男性が意外にも死んだ女性に思い入れていることを面白いと思うかというと、この男性が叫んだあたりでの嘘くささについて行けなくなったし、あれが意図的だとすればなんかやり過ぎ。