『決壊』平野啓一郎

今月号(10月号)は増ページにも関わらず、あっという間に終わってしまうの気がするのは面白いからで、新潮がこれを増ページにするのは正しい選択だ。とはいっても、冒頭あたりにもう少し粗筋をくわしく書いてくれないと途中から読もうという人もなかなか居ないとは思うけど。(粗筋といえば、とくに『太陽を曳く馬』のなんかは簡単すぎて何の話かさっぱり分からない。)
兄は完全黙秘でもするのかと思ったら、刑事さんの痛いところを的確についたりしているのが意外だった。かえってそれも反感を買って厳しくなりそうなものだから、もっとスマートにやるのかとも思っていたのだが。こういう正義は物語に没頭してしまうと気持ち良かったりするけど、彼はそれでも今はまだ周りの人間のことを考える余裕があるようで、正義の発揮もそんなところから来ているのかもしれない。別件喰らったりして、状況が悪化するにつれどう変化するか。弟の嫁とか母親がどうなっているのかも気になるけど、じつはキャラでいちばん気になるのは、犯罪者の一員と思われるイジメられっ子の母親だったりする。そういえば、便所で陰毛を拾っていた理由がやっと分かった。